どうも、おのじ(@ozy_san_0624)です。
さてさて、先日『デビルズ・ソナタ』を観ました。

未体験ゾーンの映画たち2020で配信されたものの、まんまと見逃していた映画です。楽しみにしてたのに!
見逃したことが悔しくて歯ぎしりしていたのですが、私の歯が擦り減らぬうちにこの度レンタル配信が開始されました。ありがたい。
さっそく見て思ったのが、
今日はそんな、『デビルズ・ソナタ』の感想を書いていきます。
※ネタバレ注意です。
Contents
デビルズ・ソナタ:あらすじ
非業の死を遂げた作曲家が遺した楽譜の謎に挑む女性音楽家の運命を描いたゴシックホラー。若き天才バイオリニスト、ローズのもとに、幼い頃に生き別れた父の訃報が届く。ローズは自分の父がかつて一斉を風靡しながら突如として姿を消した作曲家マーロウだと知り、遺産を整理するためフランスの田舎町へと向かう。古めかしい屋敷には、父が死ぬ間際に作曲していた「バイオリンソナタ作品54」という題の楽譜が残されていた。しかし楽譜には謎のシンボルがいくつも記されており、ローズは屋敷の中で「何か」の存在を感じるように。マネージャーのチャールズと共に楽譜の謎を解き明かしていくローズだったが、そこには血塗られた秘密が隠されていた。
引用:映画.com
とにもかくにも、雰囲気に優れている映画

「この映画は傑作か?」と聞かれると、微妙なところではあります。
壮大さがあるわけではないですし、CGのせいで緊張感が台無しになっているシーンもあるし。
ただ、本作は私が好きな作品に堂々とランクイン。
その理由が、この映画の持つ雰囲気です。
クラシック界の救世主とうたわれた天才作曲家マーロウ。彼が屋敷の中で焼身自殺するまでの流れを、一人称視点で描く冒頭。
マーロウの娘で、美しき天才ヴァイオリニスト・ローズ。
彼女に遺された広大な屋敷と、そこで見つけたマーロウの遺作である楽譜。
楽譜に書かれている謎のシンボル。
このオカルト味溢れる要素がたまらないじゃないですか。
クラシック音楽×洋館×ホラーミステリーという組み合わせにも心くすぐられますし、広大でクラシカルな洋館の中で展開していくシンプルなストーリーがまた良いのです。
でもこれだけなら、同じような映画はいくらでもあると思います。
この映画独特の、どこか浮世離れした雰囲気は、何によって醸し出されているのか?
それは、現代要素の希薄さではないかと感じました。

本作の舞台は現代ですが、ストーリーの大半は屋敷の中で進みます。
この屋敷の、まるでファンタジー映画に出てきそうなたたずまいがとにかく良い。
屋敷の中の調度品や装飾のどれもこれもが古風で、現代を感じさせる物がとにかく少ない。それに楽譜の謎を解くのにも、ネットではなく古めかしい本を使います。
出てくる現代機器といったら、ローズが持ってる携帯電話くらいだったような?
屋敷以外のシーンも多くないので、時間の流れをあまり感じさせないですし。
そのため、かなり非現実的な雰囲気に仕上がっています。
ホラーはファンタジーだと思っている私にとって、本作の雰囲気は好みのツボを何度も刺される作品でした。
舞台となるマーロウの屋敷は、ラトビアのチェスヴァイン・パレス

本作の象徴ともいえるマーロウの屋敷。そのミステリアスなたたずまいは、本作を象徴する要素の一つです。
一体どこにあるんだろう?と気になって調べたら、ラトビアにあるチェスヴァイン・パレスという建物でした。
チェスヴァインという地域の観光スポットになっているみたいですね。
2002年には火災によって、屋根と2階のすべて、1階も深刻な被害を受けたようです。現在は復旧作業を経て、ツアーが催されているようですよ。
淡々と進む、楽譜の謎解き

こんな雰囲気抜群の舞台で、楽譜に記されたシンボルの謎を解くローズと、彼の親代わりでマネージャーでもあるチャールズ。
調べていく過程で「悪魔」という不穏な単語も出てくるし、おまけにもいっちょ、どうやら街で行方不明なった子どもたちにもマーロウが関係していたらしい…というか殺してたっぽい最悪…と、謎を解くにつれて不穏な展開を迎えます。
ホラー要素は少なめですが、本作では恐怖演出がない事がかえって良かったのかも、と思っています。ホラー映画なんですけどね。
せっかくの静かでミステリアスな雰囲気が魅力の作品ですから、下手に「ドドーン!」「ガシャーン!」なんて演出が入ったら、雰囲気ぶち壊しですものね。
まぁ、後半CGという暴挙で盛大にぶち壊してくれるのですが、それは後述します。
今作ではマーロウが遺した楽譜の謎を解き、その旋律を正しく奏でることができれば、悪魔が現れる…というストーリー。
シンプルですが、綺麗にまとまっていてとても分かりやすかったですし、こういう系の映画にありがちな「謎投げっぱなし問題」「結局何がどうなった問題」も発生していません。
ちゃんと「あれは皆死んだでしょうね。」と、みんなが共有できるラストです。
秘密結社のシンボル

楽譜のところどころに挿入されているのは、過去存在し、その思想にマーロウが傾倒した秘密結社のシンボル。
同じシンボルが屋敷のどこかに隠されていて、それを見つけることが楽譜の謎を解くヒントになっています。
あるシンボルは暖炉に火をつけると浮かび上がり、またあるシンボルは時計の裏側に…という具合に。
暖炉の中のシンボルをヒントに、楽譜を火であぶると音符が出てきたり、時計の裏に隠されていたシンボルを元に曲のテンポを遅らせてみたり。そんな風にして、少しずつ正しい譜面を再現していくのです。
何だかこれ、レ〇トン教授の謎解きみたいで、観ていてわくわくしてしまいました。
だんだんと正しい旋律が出来上がってくるにつれて、「楽譜を処分すべき」と感じ始めるローズ。
対して、富や名声に目がくらみ、不穏な行動に出るチャールズ。
チャールズは完成した楽譜を無理やりローズに演奏させ、その結果悪魔に殺されてしまうという最期を迎えます。
ローズの親代わりとして大事に思っていたのも本当だとは思いますが、彼女の才能に嫉妬していたのも真実だったんでしょうね。
秘密結社や悪魔に関わったせいで、だんだんと負の面が強くなっていったのでしょうか。ホラー映画あるある。ドンマイ。
音楽家としての才能はなくても、プロデュースやマネジメントの才能があるんだから良いじゃーん、なんて、凡人の私は思いましたが。
人を輝かせるのも滅ぼすのも「夢」だなんて、何だか皮肉です。
テンションを上げるのも下げるのも、いつだってCG
こんな風に、独特の雰囲気作りに成功しているゴシックホラーの本作。
ですがせっかくのその雰囲気を台無しにしてしまっているのが、悪魔のCGです。
真っ黒で角が生えてて…ちょっと待って、描きますから。
本作のトリを飾るはずの悪魔なのですが、そう、なぜか可愛いんですよ。
これは私が可愛く描いたわけではなくて、本編でほんとにこんな悪魔が出てくるんです。驚きでしょ。
ホラー映画ではよく「ストーリーは面白いけど、CGだけなんか…。」ってことがありますが、本作もまさにそのパターン。
悪魔のビジュアルなのに、どうしてこんなに緊張感がないのか。二度見のち三度見です。
あえてこのデザインなのか?それとも全力を尽くしてこのビジュアルだったのか?
それはわかりませんが、図らずもその可愛さにちょっとほっとしてしまう。
そんな事件が、我が家で発生してしまいました。
フレイヤ・テイングレイが可愛いのである

主人公ローズを演じるのは、フレイヤ・ティングレイ。
どっかで見たことあるな…と思っていたら、Netflixドラマ「ヘムロック・グローヴ」のクリスティーナ役の子でした。
ヘムロック・グローヴの時も可愛かったのですが、その時はもっと幼くてあか抜けない感じだったんですよね。シーズン1の製作は2013年だったから、それからもう7年も前になるのか…。
どうりで成長してるわけです。
本作ではめちゃくちゃ綺麗な大人の俳優になっていたフレイヤ・ティングレイ。びっくり。
ラストシーンで、大勢の観客の前で父の遺作を演奏するローズ。その時の真っ赤な口紅を引いた赤いドレス姿が様になっていて、同じ子とは思えませんでした。
子役からの成長に、図らずも時の流れを感じてしまう。これって映画ファンあるあるだわよねぇ。
おわりに

以上、『デビルズ・ソナタ』の感想でした。
期待して観た作品ではあったけど、こんなにも雰囲気にハマるとは思っていませんでした。
あの屋敷が実在しているというのも心高ぶりますし、いつかこの目で見てみたい…。だからコロナ早く鎮まれって思ってるんですけどね。
監督のアンドリュー・デズモンド、彼と共同脚本のアーサー・モリンについても調べてみましたが、今のところ彼らが手掛けている他作品を見つけることはできず。残念…。本作が長編デビュー作なのかな?
彼らの次作が公開されたら、ぜひ観たいなぁ。
作品情報
原題 | The Sonata |
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製作年 | 2018年 |
製作国 | フランス・イギリス・ロシア・ラトビア合作 |
上映時間 | 88分 |
監督 | アンドリュー・デズモンド |