どうも、おのじ(@ozy_san_0624)です。
Netflixで1月4日配信になった『ドラキュラ伯爵』、もう見ましたか?
NetflixとBBCの共同製作、製作陣は『シャーロック/SHERLOCK』のマーク・ゲイティス、スティーヴィン・モファット、スー・ヴァーチューとあって話題性は抜群。
で、気になる肝心の中身はどうだったのか?を今日は書いていこうと思います。
Contents
あらすじ
ドラキュラ伯爵の城から命からがら逃げだしてきたという法律家。一体そこで何が起きたのか。風変りな修道女と共に、彼は自らの記憶をたどり始める。
引用:Netflix
原作の設定を練り直した「新釈」ドラキュラ伯爵

今回のドラキュラ伯爵、すごく良かったです。面白かった。
何が面白いって、一番はその設定。
『ドラキュラ伯爵』では、登場人物の設定やストーリー構成、その結末まで、原作から大幅に変更されてます。
それは過去の「ドラキュラ」映像化作品だってそうなのですが、今作は過去のどの作品ともまた違う設定が楽しめました。
一番の変更点は、今作のヴァン・ヘルシングが、聡明で現代的な女性というところ。
原作ではエイブラハム・ヴァン・ヘルシングという名前で、精神医学を専門とするおじいちゃん教授でした。
今作では女性が演じるにあたり、名前はアガサ・ヴァン・ヘルシングに。職業もシスターに変わっています。
過去作品のヘルシングといえばいずれも男性でしたから、今回のこの方向転換はかなり思い切りましたよね。(1話終盤で彼女の本名が明かされたときの驚きといったら!)
そして第1話の語り手となるジョナサン・ハーカー。
彼にはミーナという婚約者がいて、原作ではドラキュラ伯爵を討伐するメンバーの一人といった役どころでした。
しかし今作のジョナサンは、ドラキュラ伯爵の城に監禁されているうち、自らも吸血鬼になってしまいます。
おのずとミーナとの結婚も人生もパァ。それだけでも悲惨なのに、第1話で早くも殺されてしまうという…。重要人物だったのにね。
登場キャラクターの設定変更だけでも驚きが多くて、ほんとにグッジョブです。ここでがっちり心惹かれちゃったもので、後はもう一気見コースでした。
90分×3話分ですから、映画3本一気見してるのと同じです。私の腰が痛ましい事になってしまったのは置いておいて。
ストーリー構成や結末も面白いのですが、それは以下で書いていきます。
クラシカルでミステリアスな1話と2話がめっちゃ良かった…

『ドラキュラ伯爵』の第1話と第2話は、ホラードラマでありながら、随所にミステリー要素が入った構成になっています。
ホラーとミステリーのバランスがまた良くって、変にミステリーに寄りすぎてない所が良かったんですよね~。
あくまでメインはホラーで、良いタイミングで「えっ!そうだったの!?」というシーンが入ってくるおかげで、だれることなく最後まで見れちゃうという。
イチおしは第1話
第1話序盤は原作本来の流れに添いつつも、ジョナサンが吸血鬼になってしまう、アガサが今作のヘルシングと発覚する、という新しい世界観が魅力的でした。
「ドラキュラといえば」というお馴染みのストーリーラインがあるから、まず世界観に入りやすい。そして新しい設定・演出のおかげで話の先が読めない、という嬉しい構造になっていました。
城の隠し通路の謎やアガサの正体といったちょっとしたミステリー要素も、かなーり良いスパイスでしたね~。とにかく飽きない。
今までの要素と新しい要素が、一番うまく融合しているエピソードだったと思います。
ストーリーだけ見ても、第1話が一番面白かったです。
それからね、舞台も最高でした。
トランシルヴァニアの雪深い山。その中にたたずむ、気品がありながらも不気味で重苦しく陰鬱な城。もうまさにドラキュラ城!
この城で展開されるホラー描写のすばらしさは後ほど書きますが、
- 地下で蠢く不死者や花嫁たち
- 伯爵が若返ってゆく過程
- 衰え変貌してゆくジョナサンの姿
などなど、背景と演出から溢れる絶望感も、これまたたまらなかったです。
特に伯爵とジョナサンの対比がね、素晴らしすぎぃ。
この雰囲気だけでもご飯が進みそうなくらい完成度が高かったですよ。
なんだかんだ、90分間飽きさせないって結構すごいと思うんですよね。
ホラー映画って90分超えたあたりから、だらけてきてしんどくなってくるんですけど、今作は冗長に感じることが一切なかったです。あっという間に終わった感覚すらあるというかね。
あまりにストーリーと演出が巧みだもんで、もう全部良い!全部素敵!となるのが第1話です。
船上ミステリー?な第2話
そして第2話は、伯爵がトランシルヴァニアを離れ、イギリスへ向かう道中のストーリーです。
ストーリーの内容を見ると、正直第1話ほどのインパクトはありませんでした。
ですが、まるで客船ミステリーのような流れで進んでいく群像劇が面白かったです。
船という逃げ場のない舞台なので、そこで船員や乗客が次々と伯爵の犠牲になっていく様子に焦燥感を煽られて、そこがめちゃくちゃ好みに合ってて良かったです。
効果はバツグンだ!
9号室には船長以外誰も姿を見たことのない乗客がいるという謎を抱えて、ストーリーが進行する所も憎かったですね。
そもそも第2話は、城で伯爵がアガサに船での出来事を話すという、回想の形で進行します。
これは回想シーンに見せかけて実は…というちょっとしたサプライズ演出なのですが、見事にひっかかりました。
第1話もジョナサンの回想で進んだから、まんまと乗せられましたよね。(第1話でアガサ殺されそうだったのに、どうしていきなり伯爵と仲良さげに?という疑問はありましたが)
やっぱり軽くミステリーを入れてくるのは『シャーロック/SHERLOCK』製作陣だからなのかなぁ。(偏見)
不死者のシーン、最高じゃない?

第3話の感想に行く前に、今作のホラー描写について触れておきたいと思います。
今作でホラー描写が光るのは第1話です。
特にジョナサンが地下の不死者を発見するシーンは良かったですね。
閉じ込められていた木箱から不死者がはい出す時のあの動きが、何とも言えない恐怖感をくれます。
『IT』のペニーワイズのような、『リング0』の貞子のような不気味な動きなんですよね~。感嘆。
言葉で表現すると「カクカク…ポキポキ…」というバカみたいな表現になってしまうのですが、このシーンが胸躍るシーンの1つであることは間違いありません。
それから、重厚感あるセットのなかで飛び回る蠅やしたたる血液の粘性の高さが、不快感と不気味さを掻き立ててくれていました。
耽美やびっくり演出だけじゃなく、ドラキュラではやっぱり不快感も大事だったと思うんですよね。
趣あるゴシック調の部屋なのに、どっかしら不潔…みたいな。なんか汚いものが入ってくる…みたいな。なんならもうすでに汚い、みたいな。
これぞドラキュラ。これぞホラー。
狼から人型に変身する伯爵のシーンもすごく気持ち悪くて。特に変化し始めの伯爵の頭と体のバランスの悪さに、生理的嫌悪感をあおられました。
今作ではそういう、不快感や嫌悪感を織り交ぜた恐怖演出が素晴らしいなぁと感じましたよ。
だけどこれらのホラー描写はほとんど第1話に集中しています。
第2話と第3話では、ホラー描写が少なかったがちょっと寂しいですね。(第2話は、血の描写がやたら多かった)
舞台が現代にうつる第3話

第3話ではルーシー・ウェステンラやジャック・セワード、レンフィールドが登場。
第1話と第2話が19世紀が舞台だったのに対し、第3話の舞台は一気に現代にうつります。
これはクラシカル好きな私にとっては少し寂しかったです。
アガサは第2話で死んでしまうのですが、第3話では彼女の子孫ゾーイ・ヴァン・ヘルシングが伯爵を追います。(ちなみに、アガサと同じ女優さんがゾーイを演じてます。そして後半アガサと同化していくので、ゾーイの事もアガサと表記します。)
この3話ですが、残念ながら第1話や第2話に比べて少しあっけなく、ラストも唐突な感じがしました。
序盤で123年越しに伯爵とアガサが再会するものの、わりとすぐ別行動になりますし。
その後は伯爵、アガサ、ルーシーたちそれぞれの描写がありますが、どうしても印象が薄い。レンフィールドなんて、いつの間にか不死者になってるし。
第1話や第2話のような流れを期待しすぎたせいかもしれません。
先に言っておくと、第3話のラストシーン自体は大好きなんです。
今作の新しい設定の1つに「十字架は死を克服する勇気の象徴だから、伯爵は十字架を恐れている」というものがあります。
伯爵は死者の王でありながら実は”死”を恐れている。それ故に、死に憧れを頂くルーシーに惹かれて彼女を花嫁にしようとした、ということでした。
その事実をアガサに指摘され、伯爵はやっと死に向き合う。そして病気で死にゆくアガサの血をのみ(死者の血は吸血鬼にとって毒)、長年戦い続けてきたアガサと一緒に死ぬことを選ぶ…。
という、文にしてみると中々良いラストです。
実際、このラストシーンはすごく良くて、映像もBGMもセリフも全て美しく、2人の救済に見えるエンディングが私の好みドストライクでした。余韻半端ない。
伯爵の最後のセリフが、いつまでも胸に残るよ…。
ただ、エンディングにいたるまでの流れが、えらく唐突に感じてしまうんです。
まず時間を実際に観てみると、
- ルーシーの死をきっかけに伯爵が十字架を恐れる理由が判明~クレジットエンド
この一連の流れが約10分。
ちなみにクレジットは1:30なので、その時間をのぞけば約8:30で「ルーシーの死~エンドまで」という重要シーンを駆け抜けているんですね。
早くないかい?
あまりにラストシーンが私の好みだったことで一旦は流されたんですが。振り返ってみると、やっぱり早い気がする。
せめて第1話・第2話で(または第3話の前半で)、伯爵の弱点に関しての伏線がもっと散りばめられていたら、ここまで唐突には感じなかったと思うんですけどね。
伏線を私が見逃していただけだったらすみませんですけどね。
新しい設定・ストーリー。今作で製作陣が描きたかったドラキュラ伯爵とは?

ここからは私の予測を垂れ流すタイムになります。ご容赦を。
今回の『ドラキュラ伯爵』を見ていて、テーマは「死の受容と救済」なのかな?と思いました。
今までドラキュラを扱った作品すべて見ているわけではありませんが、ドラキュラ伯爵=悪というのが一般的なイメージ。
大半のラストで伯爵は滅びますが、その死が伯爵の救済として描かれているのを見たのは、私は今作が初めてでした。
長年恐れていた死へ向き合う事にしたとき、そばに宿敵で長年戦い続けたアガサがいてくれる。伯爵にとって、これほど大きな救いはないですよね。
そして伯爵と自身の死は、アガサにとっても救いだったのかなとも思ったり。
病気で死が間近だったアガサですが、最期の時に伯爵が寄り添い、病気の苦痛を分かち合ってくれるという…。
私の大好きなラストシーンは、この2人の長年の戦いや関係性が凝縮されたシーンなのかなぁなんて感じました。
2人を包むのが、光ではなく炎なのもなんだか納得。天国というより、まるで地獄の炎に焼かれているような描写にも見えましたが、それでもやっぱり美しく見える。
2人の罪や苦悩の浄化を表しているのかしら、なんて感傷的になってしまいました。
8分30秒で駆け抜けたとしても、素晴らしいエンディングだったことは確かです。
おわりに

以上、『ドラキュラ伯爵』のレビューでした。
今作は1話90分・全3話のドラマで、まるで1本の映画を観ているような重厚感があります。
かなり充実した時間を過ごさせてもらいました~。(第3話については色々書きましたが、それでも満足です)
最初は「S2もあるのかな?」と思いましたが、どうやらミニシリーズということで続編の可能性は低そう。
でもこの完成度、S2がなくても納得です。
はぁ。しばらくはあのラストシーンでご飯が食べれそうです。ビバ。
こんだけネタバレを書いておいてあれですが、まだ未見の方はぜひ見て頂きたいなと思います。
そしてあのラストシーンを味わってみてください。
今年はまだ始まったばかりですが、今年のベスト海外ドラマに間違いなく入る作品です。おすすめ!