『モーガン プロトタイプL-9』を鑑賞しました。
人口生命体がテーマということ以外、いつものごとく全く事前情報なしで観たのですが、アニャ・テイラー=ジョイちゃんが出演していましたよ。
2021年ゴールデングローブ賞主演女優賞おめでとう~!
アニャちゃんは人工生命体モーガンを演じているのですが、本作での演技もとても良かったです。
人離れした役どころを演じるのが本当に素晴らしい役者さんですよね。
特に目の演技が何とも言えない雰囲気を醸し出していて、飲まれてしまいます。
本作はアニャ・テイラー=ジョイ出演というだけでなく、製作がリドリー・スコット、監督はリドリー・スコットの息子ルーク・スコットで、主演はケイト・マーラと豪華な顔ぶれ。
なんですが、いろいろと惜しいなぁ~、もうちょっとここんとこ掘り下げほしかったなぁ~…なんて思う所がある作品でした。
というわけで今回は、『モーガン プロトタイプL-9』の感想を書いていこうと思います。
あらすじ
「ブレードランナー」のリドリー・スコット製作のもと、息子のルーク・スコットが長編初メガホンをとり、暴走した人工生命体の脅威を描いたSFアクションスリラー。シンセクト社の研究施設で開発が進められていた人工生命体の試作品L-9「モーガン」が、突如として研究者を襲い大怪我を負わせた。事態を調査するため、危機管理コンサルタントのリー・ウェザーズと心理評価の専門家シャピロ博士が現地に派遣される。しかし、調査の最中にモーガンが再び混乱しはじめてしまい……。リー役を「オデッセイ」のケイト・マーラ、シャピロ博士役を「サイドウェイ」のポール・ジアマッティがそれぞれ演じた。
引用:映画.com
「人工生命体」というテーマがたまらない
兵器として生み出された人工生命体という設定に、とても心をくすぐられます。
私がこのテーマを好きになったのは、海外ドラマ「ダークエンジェル」がきっかけです。
遺伝子操作で作られた兵士「ジェネティック」という存在、彼らのうなじに刻まれた製造番号。
人間離れした力を持つジェネティックたちが、人として苦悩し、生き方を模索し戦う姿にめちゃくちゃ惹かれました。
主人公のマックスの製造番号、今でも忘れられません。
ジェネティックたちのアクションやバトルシーンもとてもかっこよくて、当時中学生だった私は毎週夢中になってみていました。
打ち切りが本当に悔やまれる…。
さて今回のモーガンも人工生命体がテーマ。
話の流れから推測するに、製造シリーズはL-1シリーズ、L-2シリーズ…とカウントされている様子。
本作のL-9シリーズプロトタイプのモーガンは、「感情の豊かさ」をテーマに開発された人工生命体ですよ、という設定になっています。
モーガンは本当に感情を持っていたのか?
さて冒頭でも書きましたが、アニャ・テイラー=ジョイ演じるモーガンの、人のようでいて人ではない雰囲気がとても良かったです。
「感情」をテーマに製造されたモーガンは、実は生まれてからたったの5年しかたっていません。ですが体はすでに10代後半~20歳位に成長していて、知能も人間を上回っています。
人里離れた研究所の中で監視されながらの生活ですが、研究員たちとは家族のような関係を築けていましたし、研究員達も彼女をわが子のように大切にしていました。
しかし外の世界に出してもらえない事に不満を募らせたモーガンは、ある日研究員の一人・キャシーの目をめった刺しにするという事件を起こしてしまいます。
この事件がきっかけで、危機管理コンサルタントのリーが研究所に派遣され、物語がスタートします。
本作を最後まで見て思ったことが一つあります。
それは、モーガンは本当に研究員たちを家族だと思っていたんだろうか?ということです。
まず、キャシーに怪我をさせたことを「ミスだった」と話すモーガンに違和感…。
キャシーにしたことを悔やんでいるというより、「あの場でああいう行動をとる事は正しくなかった」「今この場では、申し訳ないという態度を取らなければならない」と、その高い知能で判断しているように見えてしまったんですよね。
モーガンが「家族」という存在にはこういう態度をとるもの、と判断して今まで研究員たちに接していたのであれば、敵だと判断した途端にためらう事なく研究員たちを殺したのにも頷けます。
生まれてから自分を育ててくれた存在だというのにね…。
大人に見えてもまだ5歳だから、まだ感情が発達しきっていなかったんだろうか…とも考えたのですが、でもだったら自分で「私はまだ5歳なのよ」と同情をひくような言葉は出てこないよなぁ。あれは確信犯だよな?とも思ったり。
チェン博士がいう通り、「兵器としての枠を超えられなかった」という事なんだろうか…。
研究員たちがモーガンに示したものは、本当に愛情だったか?
本作のL-9プロジェクトの責任者チェン博士は、出番は少ないながら、そのセリフには共感しかありません。
「モーガンにとって一番残酷な事は、外の世界を見せること。」
まったくもってその通りだと思います。
「人工生命体に感情を持たせる」なんて言いながら、結局は兵器として製造されているので、何かあれば隔離指示、最悪殺処分が出る事は想像に難くありません。
そんなモーガンに、中途半端に外の世界を見せる事は本当に残酷だよなぁと思います。
感情を育むための一環だとは思うけど。
兵器としての存在に感情を持たせよう、という試み自体、残酷ですけどね。
本作を見ていると、ほかの研究員たちがモーガンに家族のように接したのは、本当に愛情だったのかな?と疑問がわきます。
失敗続きだったL-9のやっと生まれた成功体で、成長スピードも速く、知能も高く、完璧な存在のモーガン。
彼女を研究対象として愛していたのか、本当に家族だと思っていたのか。
家族だと思っていたなら、もっと早く脱走するなり、何か行動に出ても良さそうなものだけどなぁ~。なんて、うがった見方をしてしまいました。
色々と惜しさを感じる作品
テーマが好みで面白い設定ではあったのですが、本作を手放しで誰かに勧められるかというと、う~ん、といったところです。
その理由のひとつは、ストーリーがあっさりしすぎているという事。
研究員たちのバックグラウンドや思い、モーガンの思いが作中で深堀りされる事がありません。
あれよあれよという間にモーガンが面談で挑発され、キレて面談相手を殺してしまい、殺処分されそうになったので他の研究員たちも殺し、最後はリーに処分されてしまう、という怒涛の後半を迎えます。
もう少しアクションに迫力があれば、それでも見ごたえがあったと思うのですが、個人的にはアクションも今一つでした。
そしてもうひとつが、肝心なオチに中盤で気づけてしまうという点。
本作を見ていると、ケイト・マーラ演じるリーの方が無表情で職務に忠実で、よっぽど人工生命体ぽい。
危機管理コンサルタントなのに、さらっと体術繰り出すし、リーも作られた存在っていうオチ?なんて思っていたら、本当にそうでした。
リーの正体はL-4シリーズ。
モーガンの件での働きによってL-4シリーズは評価され、L-9シリーズの研究は中止。L-4シリーズの研究を進めることが決定する、といったエンディングでした。
本来であればここがどんでん返し的要素だったはず。
だけど、バコバコ殴られてるのに妙にタフで、ベランダから落ちても平気な顔でモーガン追いかけるし。
まぁ、気づいちゃうよね。
オチが分かってしまっても別に良いのですが、それならそれで、モーガンとの格闘シーンを「L4シリーズ vs L9シリーズ!!」みたく、もっと滾る演出にして欲しかったなぁと思いました。(個人の趣味嗜好です)
おわりに
以上、『モーガン プロトタイプL-9』の感想でした。
色々と心残りな部分はありましたが、アニャ・テイラー=ジョイの人工生命体ぶり(演技)が見れただけで、私は満足です。
頭髪や眉毛が白くカラーリングされてるの、めちゃくちゃ似合ってたな…。
考えてみると、アニャちゃんの役どころって「陰」なキャラクターが多いですよね。本作のモーガンも陰。
次はアニャちゃんの「陽」の演技も見てみたいなと思う今日この頃です。
作品情報
原題 | Morgan |
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製作年 | 2016年 |
製作国 | アメリカ |
上映時間 | 92分 |
監督 | ルーク・スコット |