「シャイニング」といったら、超有名なホラー映画。
そんな誰もが知っている名作映画を、私ったら観たことがありませんでした。
ホラー好きのくせに。
タイトルだけは知ってましたけど、それ以外は何も知らなかったんですよね。
ググってみたら、
- 原作小説がスティーブン・キングの名作ホラー
- めちゃくちゃ評価の高い古典ホラー映画
なんて情報が載ってました。
これは未鑑賞のままじゃもったいない。
そう思って、満を持して観た映画・シャイニング。
早速ブログに感想を書こうと思ったのですが。
なんと映画版のみならず、TVドラマ版も出てるっていうじゃないですか。
見ようかどうしようか悶々としていたら、Twitterで「ドラマ版も分かりやすくて面白い!」と教えて頂いたこともあって、結局ドラマ版も観たんですよね。
映画版も2時間半とまぁまぁ長いうえ、ドラマ版に至っては全話で4時間半。
当然、休日は丸つぶれになりました。
でも後悔はない。そのくらい、夢中になって観れたんですから。
素敵な時間をありがとう、シャイニング。
ではそんなダブルシャイニングを観た感想、いってみます。
※未見の人はネタバレ注意です。
Contents
映画版とドラマ版は別物と考える
映画版の監督は、スタンリー・キューブリック。
「ロリータ」や「アイズ・ワイド・シャット」の監督で、「A.I.」の企画もしていたらしいです。
どれも有名作品ばかりですが、私はそのどれひとつとして観ていません。
ドラマ版の監督はミック・ギャリス。
スティーブン・キング関連の作品が多い監督です。
それだけでなく、ドラマ版の製作はスティーブン・キング本人。原作の大事なとこ余すことなく映像化しちゃうんだからねという意気込みをびしばしと感じます。
で、その映画版とドラマ版ですが、全くの別物といってもいい作品でした。
スポットを当てている要素も違いますし。
原作とあまりにも内容が違う映画版。
そのためスティーブン・キングが批判を繰り返し、あまつさえ自分で映像化し直しちゃったのがドラマ版です。
そんな、背後で対立をバチバチが繰り広げられる2作品を観てどうだったのか。
映画版を一言で表すなら、「狂気に蝕まれる家族、っていうかジャック」。
映像・演出、登場人物のビジュアルがことごとく不気味。
スリリングなシーンと救いのない展開に見ごたえがあるって、これぞまさにサイコスリラー。
映画だけのオリジナル要素もあるし。
ドラマ版の方は、「圧倒的なホテルの存在感と悪意+家族愛もしっかり」。
原作に忠実かつディテールが細かく描かれているだけあって、物語の背景がとても分かりやすい。
映画版がシャイニング初体験だった私は、ドラマ版を観て初めて「あ~、あのシーンはそういう意味だったのね!」と理解することができました。
そして家族愛を感じられる流れになっているので、映画版よりもとっつきやすく感じました。
映画版:シャイニング

映画版シャイニングは、シーンの1つ1つが印象的で記憶に残ります。
ジャックの顔がその代表的シーン。
それ以外にも、双子のシーン、エレベーターからあふれる血など、数々のトラウマ映像で楽しませてくれます。
ジャック・ニコルソンが怪演するジャック(ややこしい)
「シャイニング」といったら、おそらく主人公・ジャック役のジャック・ニコルソン(ややこしい)の狂気的な表情が浮かぶ人が多いはず。

コントのパロディに使われたりもしているので、ホラーや映画に詳しくなくても「このシーンは知ってるー!」って人も多そう。
私が映画版を観て一番印象に残ったのも、やっぱりジャック・ニコルソンの常軌を逸した表情でした。
あんな全力笑顔のジャックが斧持って追いかけてくるなんて、怖すぎてちびる。

彼が何も言わなくても「あ、今ニコルソン狂ったな」っていうのを感じさせられるのですから、名優の名は伊達じゃない。
それほどニコルソンの表情から放たれる狂気(の演技)は素晴らしかったです。
リアルに狂っていく家族を見ているようで、不安感煽られるわ怖いわ。
だからといって打つ手なんてないので、絶望感も感じられます。
ジャックがなぜ狂ったかがわからず、笑顔に段々と腹が立ってくる
とはいえ。
どうしてジャックが狂気に侵されてしまったのかがはっきり語られず、突然おかしくなってしまった印象を受けるのは私だけではないはず。
ジャックが狂い始めてからホテルの亡霊たちの描写が出てくるので、本当に亡霊が存在しているのか、ジャックの幻覚なのかがわからない。
それに家族関係もあまり詳しく語られないので、彼のひととなりがイマイチよく分からない。(ジャックだけでなく、他の登場人物もですが。)
そのために、ジャックに共感だったり同情することが難しくなっています。
そんな状態でクライマックスに突入していくので、ホラーというよりは「ただの殺人鬼との対決」のように感じてしまうんですね。
ジャック=加害者
ウェンディ&ダニー=被害者
っていう構図のせいで、だんだんとジャックに腹さえ立ってきます。
あの笑顔にいら立ちを隠せずに、ついには「いけっ!ウェンディ、やったれ!!」っていう気持ちになってしまう。
ホラーなのに。
もっとホラー要素で戦々恐々としたかった…。
それに、ホテルのせいでジャックが狂ってしまったのであれば、ジャックも被害者であるはずなんですよね。
被害者であるはずのジャックですが、ラストで彼が死んだときには「あー良かった。ウェンディ達助かった。」という気持ち以外湧きません。
ジャックへの哀れみや同情が、1ミリも出てこない。
死んでホテルの亡霊の一員になってしまったジャックが、一番可哀そうなはずなんですけどね。

まぁ、その救いのないラストもいかにもホラー!という感じで私は好きですけどね。
とにかく映像が印象に残る
- ダニーにテニスボールが転がってくるシーンはテイク50
- ウェンディがジャックに向かってバットを振るシーンはテイク33~45
- 1シーン100テイクはザラ
- ジャックがドアを破るシーンには、60個もの扉を使用
- シャイニングに出演した俳優が、他の監督の撮影に参加したとき、テイク数の少なさに感謝して涙した(どんだけ…)
キューブリックの、凄まじいほどの完璧主義精神。
それだけテイクを繰り返してたら、ニコルソンにも本当に狂気宿っちゃうよね?といらぬ心配をしてしまいます。
ドアを斧で60個も破るなんて、もはや俳優じゃない。それは解体業者です。(誉め言葉)
ドアの裂け目からジャックがのぞき込む強烈なシーンは、実際に映画で観てみると数秒程度のもの。
ですがその数秒のシーンに190テイク以上、期間でいうと2週間かけたとも言われていて…。
だけどそれほど映像に拘っているだけあって、キューブリック版シャイニングはシーンの1つ1つが記憶に残ります。
部屋の配色や映しかた、光の入り方や俳優の表情。
例えばぱっと映し出される双子のシーンは、評判通り不気味さが光っていました。

この双子のシーンはドラマ版にはなく、映画オリジナルのもの。
一見パステル調で可愛らしい色彩なのに、不気味という感想しか出てきません。
キューブリック版シャイニングを後から思い出すときって、ストーリーや登場人物の掛け合いというよりは、映像が1枚1枚思い浮かぶ感覚がありませんか?
それほど人の頭に焼き付く映像が作られたってことがすごいし、そこが映画版シャイニングの一番の見どころだと思います。
リアルでも追いつめられたシェリー・デュバル

劇中で、狂ってしまった夫・ジャックに追いつめられる妻・ウェンディ。
映画版「シャイニング」の撮影では、監督キューブリックがシェリーに激しく当たって追いつめたんだそうな。
これはもちろんわざとで、映画版ウェンディのヒステリックさを引き出すためと言われています。
長い撮影時間やテイク数の多さだけで俳優陣の消耗度はとてつもないだろうに、さらにこれではキツイ。
「役のために、常にヒステリー状態でいることを求められた。」
「役のために泣きすぎて、涙が尽きた。そのためにいつも水を持ち歩いていた。」(どんだけ…)
こんなシェリーの逸話を見ているだけで、こっちも消耗します。
撮影時の写真だけ見ると、和やかそうなんですけどね。(左がスタンリー・キューブリック、右がシェリー・デュバル)

映画版ウェンディのキャラクターは、気弱で依存的。
ただ話しかけただけなのに、ジャックに「仕事の邪魔だ!!」と突然怒鳴られて詰られるシーンでは、言い返す事もなく「ごめんなさい…」と謝っちゃうようなキャラクターです。
何も悪いことしてないのに。
これに最初はもやもやするというか何というか。
私だったら、そんなこと言われた日の夕飯は何も作らないこと決定で、何なら逆にジャックみたいな顔になる勢いなんですが。

ウェンディはそんな血の気の多い私と違って、ちゃんとジャックにごはんも作ってあげちゃうし、尽くしちゃう。
えらいなっ!!
ウェンディの依存的で、とっさの状況でヒステリックになってしまう性格は、ジャックの凶行時のシーンととても相性が良かったです。
恐怖におののくウェンディの演技が、さらに焦燥感をかきたててくれるので。(きっちりジャックに反撃するあたり、良い仕事もしてます)
原作のウェンディとキャラクター設定が違うのは、凶行シーンをさらに効果的にするためなのかもしれないですね。
ドラマ版:シャイニング

1シーン1シーンが強烈に印象に残った、キューブリック版シャイニング。
ではドラマ版はどうだったかというと、視覚的に印象に残るシーンはないものの、ストーリーが奥深くて、とても分かりやすい!
ストーリー重視の人には、ドラマ版シャイニングの方が受け入れやすいんじゃなかろうか。
よっぽど不満だったスティーブン・キング
先にも述べましたが、原作者であるスティーブン・キングは、キューブリック版シャイニングに納得していませんでした。
映像部分の素晴らしさは認めたものの、ストーリーが大幅に変更されている点に納得できず批判を繰り返しました。
そのため映画公開から17年の時を経て、より原作に近いドラマシリーズをキング本人が製作。
原作者がスティーブン・キング本人であっても「シャイニング」を映像化する権利を持っていたのはキューブリックだったので、キューブリック版シャイニングへの批判を自重することを条件に、ドラマ版製作の許可がおりたようです。
ジャックに同情できる日がくる喜び
そんな経過を経てのドラマ化なので、ストーリーが原作に忠実なのも頷けます。
映画に比べて視聴時間が長いドラマなだけあって、
- ホテルの存在感と意思
- シャイニング能力についての描写
- 人物描写
ここら辺が丁寧で分かりやすい。
映画版だけでは分からなかった部分が分かるので、「これはどういうこと?」って部分がすっきりします。
何より登場人物に感情移入ができる。
それだけでも、原作を知らない人はドラマ版を見る価値があるよなぁ~。

ドラマではホテルの圧倒的な存在感と、ホテルのせいでジャックが狂気に侵されていく過程が丁寧に描かれているので、恐ろしい姿になっていたとしても彼に共感・同情できちゃう。
これが一番良いポイントだと思ってます。
だって、あのジャックに同情できる日が来る奇跡。
ウェンディにいたっては別人
ドラマ版ウェンディのキャラクター設定は、映画と結構違います。
映画版では気弱でヒステリックな女性として描かれていましたが、ドラマ版のウェンディは明るく夫を支える自立した女性として描かれています。
ヒステリックになることはないですし、自分の主義主張をしっかりとする。
ジャックのことを愛してはいるけれど、息子のダニーが傷つく可能性があれば、ジャックを切り捨てることもいとわない。
そんな強い母親でもあります。

そしてえらい美人でもある。
それはおいておいて、ジャックのことも、ダニーのことも大切にしているウェンディ。
それなのに2人のことを守れない。その辛さをドラマ終盤では感じました。
映画版と違い、ホテルの存在や影響は、ウェンディもはっきり理解しています。
ジャックがおかしくなったのがホテルのせいであることも分かっていて、だからこそ、なんとか正気に戻って欲しいと願ってしまうのは仕方のないことかもしれません。
そのためにジャックにハンマーでボコボコにされるのだけど…。
ウェンディの、妻として、母としての葛藤を知ることができるのも、ドラマ版の良い所です。
ラストはまんまと泣きました
原作にあって映画版にないもの。
それが感動です。

ドラマは人の背景や家族の絆に焦点が当てられているので、ジャック一家についつい感情移入してしまいます。
そんな状態で、終盤にジャックが自我を取り戻して家族を助けるシーンを見たら。
ラストの、成長したダニーの卒業式にジャックが現れるシーンを見たら。
もう特に卒業式のシーンなんて、泣いてくださいと言わんばかりの…!!
父親の愛情、子が親を想う愛情に、思わず私の涙腺は崩壊しました。
ホラーの中にこういう、良い意味での「人らしさ」が含まれていると、余計に胸打たれます。
キューブリック版のように、強烈に印象に残る映像はドラマ版にはありません。
ですが登場人物たちの苦悩を知ることができて、ストーリーを深く理解しながらみれるので、ラストには満足感や感動がある。
できればキューブリック版とキング版、どちらも一緒に見るのが良いと思います。
終わりに
紆余曲折があった「シャイニング」の映像化。
鑑賞して思ったのは、原作からイメージを大きく変えた映画版も、原作に忠実なドラマ版も、どっちも観れてほんとラッキー!ってことでした。
鑑賞する側としては、気になる作品の映像化が複数あるなら、全部観たいのが正直な気持ち。
しかもそれが有名監督や原作者本人によるものであるなら、なおさらです。
製作者同士ではバトルがあったのかもしれませんが、結果的に2つのシャイニングを見れたのだから嬉しい。
そんなこと言ったら怒られるかもしれませんけど。
ではでは、おのじ(@ozy_san_0624)でした。
作品情報はこちら↓
作品情報

原題 | The Shining |
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製作国 | アメリカ |
製作年 | 1980年 |
上映時間 | 2h 26min |
監督 | スタンリー・キューブリック |

原題 | The Shining |
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製作国 | アメリカ |
製作年 | 1997年 |
上映時間 | 4h 33miin |
監督 | ミック・ギャリス |